コラム
こんにちは。福福トレカ遊戯王スタッフです。
今回は秋葉原店にて開催された第22回「福福雪合戦」のデッキ分布や大会結果を振り返りつつ、そこから環境の変遷を見ていこうかと思います。
最後までお付き合い頂ければ幸いです。
まず「福福雪合戦」とは、1103環境の遊戯王の大会を運営されている「寒波亭」様とのコラボ大会です。本大会も同様に1103環境にて行なっております。
そして1103環境とは、2011年3月時点でのルール及び禁止制限で対戦するレギュレーションです。レギュレーションやカードプールは、細かい差はあれど基本的に当時のまま変わることはありません。
しかしそんなルール下でもメタゲームは回り続けています。当時は採用されていなかったカードが活躍したり、はたまた新たなデッキ構築が生まれる事も珍しくありません。
たとえ閉じた環境であってもデッキ構築の幅は狭まる事を知らない、遊戯王の奥深さを知るにはもってこいのレギュレーションと言えるかもしれません。
環境の推移を比較する為にも、まずは前回の第21回大会の結果から見ていきましょう。
まず予選でのデッキ分布はこちらです。
かねてより環境を席巻していた【HERO】が本大会でもトップシェアに。
【HERO】は「E•HEROエアーマン」をはじめとした『HERO』モンスターを手札に加えるカードが多く安定性の高さに定評があります。
本大会時は「ヒーローアライブ」や「E・HEROバブルマン」の採用により展開力を増強した【アライブHERO】、そして「ヒーローアライブ」の大きなライフコストによるリスクを嫌って代わりに「強欲で謙虚な壺」を採用し対応力を挙げた派生デッキ【ピュアHERO】型の構築が主流でした。
続いては【デブリダンディ】【TGガジェット】
【兎ラギア】がシェア数同率で並びます。
【デブリダンディ】は、元々「デブリドラゴン」と「ダンディライオン」のコンボを指す言葉でしたが、それらと強いシナジーを形成するカードと共に構築されたデッキの名前として定着していきました。強力なシンクロモンスターの展開を主軸とした、当時ではまだ数少ない展開系のデッキとして活躍していました。
【TGガジェット】は『ガジェット』と『TG』、2つのカテゴリーの混成デッキです。どちらも追加のモンスターを手札に加える効果を備えており、リソース差で相手を追い詰めていくデッキです。隙あらば特殊召喚効果を備えた「TGストライカー」や「TGワーウルフ」、追加でモンスターの召喚を行える「血の代償」を駆使して、シンクロ、エクシーズモンスターを展開できる側面も兼ね備えています。
そして【兎ラギア】は「レスキューラビット」から展開したモンスターを素材に「エヴォルカイザーラギア」をはじめとした強力なエクシーズモンスターの召喚を目指したデッキです。たとえ「レスキューラビット」の引き込めなくとも、「ライオウ」や「魔導戦士ブレイカー」といった妨害効果を備えたモンスターを駆使しつつ、「次元幽閉」「強制脱出装置」など強力な除去効果を持つ罠カードを用いて戦う事もできます。
以上を踏まえて決勝デッキの分布を見てみましょう。
上位シェアからはやはり、と言うべきか【HERO】と【兎ラギア】が2名ずつ入賞を果たしました。
特に【HERO】は本大会の1位、3位に入賞し、その力を改めて知らしめる結果となりました。
次いで1名のみ決勝トーナメント入りした【暗黒界】が2位に入賞しています。
手札から「捨てられる」と相手を破壊したり特殊召喚する効果を持つ【暗黒界】は、手札が上手く噛み合うと爆発的な展開力を見せるデッキです。
特に除去カードを豊富に備えたトップシェアの【HERO】に対して、何度でも墓地から復活する「暗黒界の龍神グラファ」が強く刺さったものと考えられますが、今回は惜しくも2位入賞に留まりました。
以上が前大会のハイライトです。
前置きが長くなってしまいましたが、ここからはいよいよ22回大会の結果を見ていこうかと思います。
まずは予選でのデッキ分布はこちらです。
前回同様に【HERO】がトップシェアを牛耳る形になりました。以前は【アライブHERO】と【ピュアHERO】が入り混じる形でしたが、今回から【アライブHERO】は消え、流行は完全に【ピュアHERO】へと移り替わった様に見受けられます。
しかし、そんな中でも従来とは異なる構築の【HERO】が登場しています。
「グローアップバルブ」を採用しシンクロ召喚を行える様にした構築や、それのみに留まらず「スポーア」「ローンファイアブロッサム」等のいわゆる「植物族出張セット」一式を採用し、よりシンクロ召喚に傾倒した構築が登場。
他にも「デブリドラゴン」を用いて対【HERO】カードとして採用率の高い「スノーマンイーター」を墓地から特殊召喚しシンクロ召喚に繋げられる構築。
更には「リチュアビースト」を採用した構築も登場しています。「リチュアビースト」は墓地の『リチュア』モンスターを特殊召喚できる効果を備えており、同名モンスターを展開してのエクシーズ召喚を狙っての採用の様です。
過去に研究し尽されたと思われたデッキでも、この様に新たな構築、戦術が生まれてくる事が1103環境の醍醐味とも言えるでしょう。
続いて分布数2位となったのは、前回も大きなシェアを獲得した【兎ラギア】です。
こちらはメインデッキの構築に大きな差は無い様に見えますが、一方でサイドデッキの採用カードに各プレイヤーの個性が強く出ています。
【HERO】の主力である「E・HEROアナザーネオス」の攻撃を受け止めつつ除去効果を発動できる「スノーマンイーター」や、相手の『HERO』モンスターを融合素材として除去できる「超融合」など【HERO】を重く見たカードを採用した方や、
お互いの特殊召喚を封じる「フォッシルダイナパキケファロ」や、相手の伏せた魔法、罠カードの発動を封じる「心鎮壷」を採用し、相手の行動を縛る事を意識した方、
変わったところでは、相手の裏側守備モンスターを一方的に破壊できる「エレキンモグラ」を採用する方も見受けられました。「エヴォルカイザーラギア」が苦手とするリバース時に効果を発動するモンスターへの対策として採用されたものと思われます。
そして分布数3位となったのは【デブリダンディ】です。
従来であれば動き出しの遅い【HERO】【兎ラギア】に対して展開の物量差で有利を取れるとされていた【デブリダンディ】ですが、直近ではそれらのデッキの後塵を拝する形となっています。
元々展開できるかどうかが墓地に落ちるカード次第という不安定さに加え、仮想的である【HERO】がサイドデッキに採用している「群雄割拠」や「スキルドレイン」が苦しい事が要因でしょうか。
「スキルドレイン」は最近シェアを伸ばしつつある【暗黒界】にも採用されており、加えて同じくサイドデッキに採用されている「魔のデッキ破壊ウィルス」も致命的なカードとなります。
それに次いで前述の【暗黒界】と【代行天使】が同率4位のシェアとなっています。
どちらも手札次第では驚異的な爆発力を生み出すデッキですが、裏を返せば安定性を欠いたデッキとも言える為、勝率を保つのが難しいのかもしれません。
以上を踏まえて決勝トーナメント進出テーマ及び大会結果を見ていきましょう。
なんとトップシェアであった【HERO】は、たった1名しか残らない結果になりました。
【HERO】が環境最上位であることは周知の事実であった為、各プレイヤーともサイドデッキに「スノーマンイーター」や「超融合」といった対策カードを採用した構築が多かった事が要因でしょうか。
その隙をついて、シェア数2位の【兎ラギア】が3名も決勝トーナメントに進出する快挙となりました。
そして内1名の【兎ラギア】使いの方が優勝を勝ち取りました。おめでとうございます!
こちらの方はなんと予選含めて全勝!
対戦相手のデッキや、その時々の状況により使うカードの取捨選択が常に求められる【兎ラギア】はプレイングが如実に反映されるデッキなだけに、文句無しの実力だったと言えるでしょう。
次いで2位となったのは、なんと環境外からの刺客【アンデディーヴァ】デッキでした。
こちらは、墓地に送られるとアンデット族モンスターを手札に加えられる「ゴブリンゾンビ」でリソースを確保、そして墓地のアンデット族を復活させる「ゾンビマスター」の効果でモンスター並べてシンクロ、エクシーズ召喚を狙う動きが主軸のデッキの様です。
「深海のディーヴァ」を採用し複数のシンクロモンスターの展開を狙っている点、「トラップスタン」をメインデッキから採用し罠カードへの対策を強く意識している点など注目すべき点は他にもありますが、やはり最も目を引くのは「茫漠の死者」の採用でしょう。
特殊召喚時に相手ライフの半分の数値分だけ攻撃力が上がる効果を持ち、相手ライフが8000のままであれば攻撃力4000の文字通り”モンスター”と化します。もちろん都合良く相手ライフが8000のまま…という事はないでしょうが、攻撃力3000を超えるようなモンスターを用意しづらい1103環境では脅威たりえるポテンシャルを秘めています。
レベル5ゆえ場に出しづらい…と思いきや、そこで活躍するのがこの「ピラミッドタートル」。
このカードで相手モンスターに自爆特攻、から突如現れる高打点の「茫漠の死者」…。
特殊召喚されるタイミングもダメージステップの為、阻害する手段が限られている事も厄介です。
実際の対戦でも「ピラミッドタートル」を経由して特殊召喚、相手の「ライオウ」を倒し主導権を取り返すシーンが見られました。
しかし最後は相手の「マクロコスモス」により墓地利用戦術を封じられ惜敗…。軍配は【兎ラギア】に上がりました。罠カード対策を豊富に採用した構築ではありましたが、最後の最後に引き当てる事ができず、そのまま押し切られる形となりました。
以上が第22回福福雪合戦の振り返りとなります。
現在は【HERO】が環境トップとして台頭しており、事実本大会でもトップシェアを獲得しておりました。
しかしその強さも絶対ではなく、環境を読んだ上でのカード選択や実戦でのプレイング次第で今回の様な大番狂わせは起こりうるのです。
更に言えば、今後の研究次第で環境が激変する可能性もあります。
事実、少し前の福福雪合戦では全く違う勢力図になっていました。
この様に閉じられたカードプールでありながら、プレイヤー達の弛まない環境考察やプレイング研究によって絶えず流動しているのが1103環境という熱いレギュレーションなのです。
次回の第23回もこの熱い対戦模様をレポートしていく所存です。ぜひお楽しみに!